小さな体に美しさと奥深さを秘めた淡水魚「タナゴ」。その繊細なアタリを見極め、丁寧に釣り上げる楽しさは、初心者からベテラン釣り師まで幅広く愛されています。
この記事では、タナゴ釣りの基本から、道具選び、釣れる時期や場所、エサのコツまで、初心者の方にもわかりやすく解説。小さなターゲットとの静かな駆け引きを、ぜひ体験してみてください。
タナゴってどんな魚?

タナゴはコイ科タナゴ亜科に属する小型の淡水魚で、日本では全国の川、用水路、ため池、水田など比較的静かな水域に広く分布しています。体長はおおよそ5〜10cmほどと小さく、魚釣りの中でも”小物釣り”の代表格です。
一番の特徴は、繁殖期に見られるオスの婚姻色です。鮮やかな赤や青、紫がかったメタリックカラーが体に現れ、その美しさから観賞魚としても高く評価されています。特にヤリタナゴやアブラボテなどは、春になると一層鮮やかな体色を見せ、写真撮影や水槽飼育でも人気の種です。
また、タナゴは二枚貝(ドブガイやカラスガイなど)の中に産卵するという独特の繁殖習性を持ち、貝と魚の共生関係を示す生態系の面白さも持ち合わせています。
日本には数十種のタナゴ類が存在しており、東日本ではヤリタナゴ、西日本ではカネヒラ、近畿以西ではイチモンジタナゴなど、地域ごとに分布が異なるのも魅力のひとつです。近年では絶滅危惧種に指定されているタナゴも多く、保全活動やキャッチ&リリースの重要性が高まっています。
タイリクバラタナゴとは?
特に釣り場でよく見かけるのが「タイリクバラタナゴ」です。中国原産の外来種で、かつて観賞魚や放流目的で日本に持ち込まれたものが野生化しました。体は丸みがあり、繁殖期にはバラ色の婚姻色があらわれることから「バラタナゴ」の名が付いています。
在来のニッポンバラタナゴとよく似ていますが、タイリクバラタナゴの方が成長が早く繁殖力も強いため、各地で在来種との交雑や生息域の競合が問題視されています。そのため、釣ったタイリクバラタナゴは放流せずリリースを控えるなど、生態系保全の観点からも適切な取り扱いが求められています。
それでも、その美しさや釣りやすさから初心者にも人気のターゲットであり、初めてのタナゴ釣りで出会う魚としては代表的な存在です。
タナゴ釣りの魅力と楽しみ方

タナゴ釣りの魅力は、なんといってもその”繊細さ”にあります。数センチの極小サイズの魚を、極細の仕掛けで釣るというスタイルは、まさに日本ならではの伝統釣法の趣があります。
ウキがわずかに揺れるアタリを見極めて合わせる感覚は、静かな釣りの中にも集中力とテクニックを要し、”釣りの奥深さ”を味わえる瞬間でもあります。初心者には「本当にこんな小さな魚が釣れるの?」という驚きがあり、慣れてくると”どれだけたくさん釣れるか”や”婚姻色の美しい個体を見つける”という楽しみも増えていきます。
また、使用する道具が非常にコンパクトで、収納も楽なため、都市部のちょっとした水辺でも気軽に釣りを楽しめるのが魅力です。お散歩やサイクリングがてら、近くの用水路や小川で釣りをするスタイルも人気があります。
さらに、タナゴ釣りは小さなお子さんや女性にも始めやすく、家族で楽しむアウトドアとしてもぴったりです。釣りを通じて自然とのふれあいや水辺の生き物観察をするなど、学びの場としての要素もあります。
ベテラン釣り師の間では、より小さな針やウキ、自作の仕掛けや竿にこだわるなど、道具づくりの楽しみも加わり、趣味としての奥行きがどんどん広がっていくのもタナゴ釣りの魅力のひとつです。
タナゴが釣れる時期と時間帯
タナゴは基本的に一年を通して釣ることができますが、最も活性が高く釣りやすいのは春と秋です。特に春(3〜5月)は産卵期を迎えるため、活発に動き回るオスの個体が増え、美しい婚姻色を持ったタナゴを釣る絶好のシーズンとなります。秋(9〜11月)は水温が安定し、餌をしっかり食べているため、サイズの良い個体を狙いやすい時期です。
夏(7〜8月)は水温が上がりすぎるとタナゴの活性が落ちることがあり、また水質も悪化しやすいため、朝晩の比較的涼しい時間に絞って釣るのが効果的です。冬(12〜2月)は活性が落ちて釣りにくくなりますが、日当たりの良い浅瀬や温排水のある場所などを狙えば釣果を得ることも可能です。
時間帯については、一般的に朝(7〜10時頃)と夕方(15〜17時頃)がゴールデンタイム。太陽が高く昇って気温が上がる昼間は、水温の上昇や人の気配によって魚が警戒してしまい、アタリが遠のくことがあります。特に夏場は、早朝や日没前などの涼しい時間帯を狙うことで釣果が安定しやすくなります。
天候や気圧の変化にも敏感なタナゴは、雨の前後や曇天の日に活性が上がる傾向もあるため、気象条件をチェックしながら釣行の計画を立てるとよいでしょう。
タナゴ釣りに適した場所

タナゴは、流れが緩やかで水草や障害物の多い場所を好むため、以下のような環境が釣り場として適しています。
- 農業用水路や小川:都市部でも比較的見つけやすく、水深が浅くて足場もよいため、初心者や子ども連れにもおすすめのスポットです。護岸されていない自然な場所の方が魚影が濃い傾向があります。
- ため池や池:静かな水面と豊富な水草がタナゴにとって快適な環境となります。地域によっては釣り禁止の場所もあるため、事前に確認が必要です。
- 河川のワンド(淀み):本流から外れた流れの少ないエリアには、タナゴやその他の小魚が溜まりやすく、隠れた良ポイントになっています。
- 沼や湿地帯の縁:湿地に生息する水生植物の周辺は、小型魚類の産卵・隠れ場所にもなっており、春先には婚姻色のタナゴが群れていることもあります。
特に春〜初夏にかけては、二枚貝が多く生息する場所でタナゴが産卵行動を行うため、そういった環境を見つけることが釣果アップのカギになります。
釣り場選びのポイントは、「水の透明度」「流れの速さ」「水草の量」「アクセスのしやすさ」。初めての釣行では、地元の釣具店で情報を聞いたり、インターネットで地域の釣果情報をチェックしておくと安心です。
必要な道具と仕掛け

タナゴ釣りはシンプルな道具立てで楽しめる釣りですが、繊細なターゲットに対応するためには専用の道具選びが重要です。
竿(タナゴ竿)
全長は30cm〜1.5m程度が主流。取り回しやすさ重視で選ぶなら、60〜90cm前後の短竿が初心者向きです。

道糸
0.2号〜0.4号程度の細いナイロンラインが一般的。
ウキ
小型・高感度の棒ウキや玉ウキが主流。
ハリスと針
ハリスは0.2号前後が標準。針は「タナゴ針」と呼ばれる極小サイズの専用品が必須です。
オモリ
ガン玉のB〜2B程度を使用。

仕掛け(市販 or 自作)
初心者には市販の「タナゴ仕掛けセット」がおすすめ。

エサの選び方と付け方
タナゴ釣りでは、魚の口が非常に小さいため、エサの種類や付け方が釣果を大きく左右します。ここでは代表的なエサと、それぞれの使い方・工夫を詳しく紹介します。
タナゴ釣りでよく使われるエサ
アカムシ(赤虫)
最もポピュラーで実績のあるエサ。水中での動きがよく、タナゴの食いが非常に良いため、多くの釣り人が愛用しています。
- 選び方:鮮やかな赤で、元気に動くものを選ぶ。
- 保存方法:釣行中は冷暗所や保冷剤で温度管理を。

黄身練り(きみねり)
卵黄を練った団子状のエサ。集魚力は高く、アカムシが苦手な人にもおすすめ。
- 市販品:すでに練られているタイプもあり、持ち運びが便利。
- 手作り:卵黄+小麦粉や片栗粉を練って、自分好みに仕上げることも可能。

グルテンエサ
タナゴ用の練り餌で、水中でゆっくり溶けてアピールします。アミノ酸などの成分が含まれているため、食いが良いです。
- 例:「タナゴグルテン」「小さなグルテン」などが市販されている。
- メリット:扱いやすく、針付けもしやすい。

紅サシ(ベニサシ)
ウジの一種で、やや大きめのエサ。大きなタナゴやクチボソなど他魚も狙える。
- 注意点:タナゴにはやや大きすぎることもあるため、小さくカットして使うと良い。
冷凍赤虫・乾燥赤虫
生きた赤虫が苦手な人向け。食いはやや落ちるが、保存や持ち運びに優れる。
エサの付け方のコツ
タナゴ釣りは針が非常に小さいため、エサの付け方も細やかなコツが求められます。
アカムシの付け方
1匹をそのまま使うと大きすぎるため、1/3〜1/2にカットして使用。
- カット方法:ハサミや専用ピンセットで、節の間を切ると扱いやすい。
- 付け方:針先にチョン掛けして、なるべくエサの先が動くようにする。
黄身練り・グルテンの付け方
ごく少量を指先で取り、針先にちょんとつけるのが基本。
- 量の目安:直径2mm程度。大きすぎるとタナゴが食べにくく、針がかりしづらくなる。
- 形状:丸く丸めるより、針先を隠すようにそっと被せるようにつけると自然なアピールになる。
紅サシの付け方
必要に応じてカットし、小さくしてからチョン掛け。
- カット後は断面から匂いが出て集魚効果もアップします。
エサ管理と取り扱いのポイント
- ピンセットを使うことで小さなエサも正確に扱える。
- 夏場はクーラーバッグなどでエサが傷まないように注意。
- エサが水に濡れると劣化しやすいため、こまめにふき取りや日陰管理を。
タナゴ釣りでは、”エサのサイズと針のバランス”が特に重要です。釣れない時は、エサの大きさをほんの少し変えるだけで劇的に釣果が伸びることもあるため、ぜひ微調整を試してみてください。
タナゴ釣りの基本テクニック
タナゴ釣りは繊細な仕掛けを用いた“見て感じる”釣り。小さなアタリを見極め、素早くアワセる技術が求められます。ここでは初心者でもすぐに実践できる基本的なテクニックを紹介します。
タナゴ釣りの流れ(基本のステップ)
- 仕掛けをセットし、水中に静かに投入する
- 魚を驚かせないように、水面に仕掛けをそっと落とす。
- ウキが安定するまで待つ
- 着水後、ウキがピタッと立った位置がタナ(魚のいる深さ)。
- 風や流れで仕掛けが流されないよう、竿先で微調整。
- アタリを取る
- タナゴのアタリは「ウキがチョンと動く」「フッと沈む」など微細な動き。
- 大きく沈むことは稀なので、細かい動きを常にチェック。
- アワセ(合わせ)を入れる
- ウキに反応があった瞬間、軽く手首を返す程度の小さな動きで竿を上げる。
- 強く引くと針が外れたり、魚が傷つくためNG。
- タモや手で魚をやさしくキャッチ
- タナゴはデリケート。手で触るときは水で濡らしてから。
アタリの見分け方
- 本アタリと前アタリを見極める
- 前アタリ:ウキがツンツンと動くだけで、まだ口に入っていないことが多い。
- 本アタリ:ウキがスッと沈む・横に流れるなど、はっきりとした動き。
初心者はまず“前アタリが出たら一呼吸おいてアワセる”感覚を掴むのがコツ。
誘い(さそい)のテクニック
タナゴは警戒心が強いため、エサを止めて待つだけでなく、軽く誘う動きが効果的。
- 上下に軽く動かす:竿先を数センチ上下させてウキを小さく揺らす。
- エサをチョンと動かして興味を引く:
- ゆっくり沈め直す、または軽く水面近くまで引き上げる。
8. 釣れないときのチェックポイント
- タナの調整:魚のいる層を外していることが多い。
- こまめにウキ下の長さを変えてみる(5cm単位で調整)
- エサの大きさを変える:
- 小さくして喰いやすく、または種類を変えてみる。
- 場所を少し移動する:
- 数メートル移動するだけで入れ食いになることも。
- アワセのタイミングを変える:
- 早すぎても遅すぎても空振りしがちなので、色々なテンポで試す。
ワンポイントアドバイス
- タナゴ釣りは”目”が命。できれば偏光グラスを使用し、水中やウキの動きをより鮮明に見ると精度アップ。
- 無風または微風の条件が釣りやすく、ウキの動きも読み取りやすい。
- 慣れてきたら、複数の仕掛けやエサでパターンを見つけるのも楽しい!
タナゴ釣りの醍醐味は「繊細さの中にある駆け引き」。アワセが決まり、美しい魚体が見えた瞬間の喜びは格別です。焦らず、観察力を磨きながら少しずつ上達を目指しましょう。
釣ったタナゴの取り扱い
タナゴは繊細なので、釣った後は優しく扱いましょう。観賞する場合は水温や酸素に注意して飼育します。リリースする際は魚体を傷つけないようにそっと水に戻します。持ち帰る場合は各地の規制に注意。
タナゴ釣りのマナーとルール
釣り場ではゴミを持ち帰る、騒がないなど基本的マナーを守りましょう。地域によってはタナゴが保護対象になっている場合もあるので、捕獲制限や禁漁区の有無を事前に確認することが大切です。
まとめ
タナゴ釣りは、その繊細さと美しさで釣り人を魅了する魅力的な釣りです。小さな魚ながら、タナゴを釣るためには、細かなテクニックと注意深い取り扱いが求められます。エサの選び方や仕掛け、釣り方を理解し、アタリを見逃さず、確実にアワセる技術を身につけることが重要です。
また、釣った後のタナゴの取り扱いにも気をつけましょう。魚の体に負担をかけないよう、素早く水中に戻すことが大切です。タナゴを釣ることで、自然との繋がりを感じながら、釣りの楽しさとともに美しい風景を楽しむことができます。
タナゴ釣りは、初心者でも始めやすく、少ない道具で手軽に楽しめるため、まずは基本を押さえ、釣りの醍醐味を味わってみてください。釣れた時の喜びや、タナゴとの駆け引きを通じて、釣りの魅力を存分に感じることができるでしょう。
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タナゴ釣りとは、またまた繊細なs釣りを始めましたね。[絵文字:v-411]
でもなんだか楽しそうです。
同じ繊細な釣りでも、手長エビだったら美味しく頂けそうですが。[絵文字:v-411]
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繊細ですよね!^^
冬場でも近場でできる釣りを求めて辿り着きました。
ところが難しくて、タナゴを専門に狙う人もいるほど奥が深い釣りのようです。アタリがあって合わせる基本動作も同じなので練習になりそうですv(^^*)
集中力が必要でいつものようなゆる~い釣りではなく真剣になってますよ。置き竿とか絶対できません(。・・。)(笑)
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近場のタナゴ釣りいいですね!
家からも近い!
婚姻色の出たタナゴは熱帯魚にも勝るぐらいの発色になりますよ。
あんなに小さくても伝わるピクピク感は何とも言えません。
もうすぐ農業用水の増水時期になります、手賀川下流の樋管沿いの
チョコレートブロックあたりも好ポイントになります。
エサは
黄身ネリ(ホットケーキMIXでネルネル)卵黄一個で2~3回釣行分
できるのでラップに包んで冷凍保存。
黄身ネリポンプなるものがありますが100均のキッチン保存袋の角を
カットすればホイップクリームの絞り出し要領で使えます。
ちなみに私は30円の針なし注射器に充填して使用してます。
グルテン5は(オリーブオイルを少し混ぜると手につかない)ペットボトルの
キャップに一個分で一日十分持ちます。
先日、ヒラツメガニ今季2回目出撃もダメダメで白子海岸から何か所も偵察しながら北上し、波崎まで移動、まさかのこの時期にハマグリ人たくさんいました。
そろそろハマグリもいいですよ!
波打ち際でも大き目サイズがとれましたよ。
ご家族皆様健康でありありますように!
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こんにちは~(*^-^*)
すごく詳しいんですね!!✨✨
次の日に会った釣り師の方も農業用水の増水の話をされていました。ポイントが増えるのはいいですね。
エサや保存も参考になります。
間違って落としたタナゴグルテンにわんさか群がってコマセ効果のようになっていたので、十分グルテンで食ってくるんだなと思いました(笑)
ハマグリもちょうど話していたんです~。
去年ずぶ濡れになったので今年は最初から水着&カッパで出撃予定、転ぶであろう次男はおんぶ紐で…って気合入れすぎでしょうかね~ (*´ー`*)(笑)少し暖かくなってからと考えていましたが、そんな話を聞くとすぐにでも行きたくなります☆
カニさんは不調ですか?!
たくさんとれますように(^^)